コラム

翻訳チェッカーが気を付けている3つのポイント

2023年11月24日

 

はじめに

はじめまして。今回から、隔月を目途にコラムを執筆させていただくことになりました。弊社ホームページをご覧の皆様に少しでも有益な情報をお届けできるよう心掛けてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回は、翻訳会社のチェッカーとして働く私の目線から、お客様に納品する成果物の品質を確保するために気を付けていることをご紹介したいと思います。

このようなことを書こうと思った理由は、実際に翻訳に携わる人間がどのようなことを考えているか、お客様にお伝えしたいと思ったためです。

弊社の場合、常日頃からお客様と接点を持っているのは営業担当者です。チェッカーは、お客様に成果物の納品するとき、また成果物に対してお客様からご質問を頂いたときのみお客様とやり取りをしています。

お客様のご要望をお伺いし、適切なご提案をするのが営業担当者の仕事である以上、営業担当者が主なお客様との窓口となるのは自然なことでしょう。しかし、実際にお客様が手に取ってご利用いただく成果物に携わっているのは営業担当者ではなく、翻訳者や、翻訳者が訳した内容を確認するチェッカーです。ただ、上に書いた通り、チェッカーがお客様と接する機会は決して多くはありません。お客様からしたら、実際に自分が手にする成果物を作っている人のことが分からないと不安になるのではないか?と思い、このようなテーマを取り上げさせていただきました。

このコラムを読んでいただくことにより、普段から品質向上のために弊社で取り組んでいることを、少しでも知っていただけますと幸いです。

 

チェッカーとは

本題に入る前に、チェッカーと言う仕事について簡潔にご紹介いたします。

通常、弊社は案件を受注すると、翻訳者に翻訳を依頼します。その後、翻訳者から成果物が上がってくる訳ですが、その成果物をそのままお客様に納品する訳ではなく、誤訳や訳漏れなどの不備がないかをチェックします。その作業を行うのがチェッカーになります。

続いて、チェッカーは具体的にどのようなことに気を付けてチェックを行っているのか、3つに分けてご紹介いたします。

 

チェッカーが気を付けていること

気を付けていること① 誤訳や訳抜けがないか

翻訳者による翻訳と、お客様から頂いた原稿を突き合わせて、誤訳や訳抜け等のミスがないかを確認します。翻訳会社であれば、誤訳や訳抜けがないように注意するのは当たり前とされますので、特別気を付けていることとしてお伝えする必要はないかも知れません。しかし、誤訳や訳抜けがあると、どんなに優れた翻訳だったとしても翻訳の品質に影響してしまいますので、必ず気を付ける必要があるという意味で入れさせていただきました。

基本的にはどの内容も誤りがないことが大事ですが、個人的には、お客様のビジネスに影響を与えやすいことから、特に数字については入念に確認するようにしています。

 

気を付けていること② 固有名詞や、人名に間違いがないか

お客様の会社名や部署名をはじめ、翻訳には数多くの固有名詞が登場します。会社名や部署名であれば、インターネットで検索すれば多くの場合情報が出てきますので、可能な限り正確な情報を調べたうえで確認するよう心掛けています。一方で、どうしてもお客様にお伺いしないと確認できない正式な読みや表記も存在します。その際は、例えば読み方に迷う漢字表記の単語を英文で表記するのであれば、一般的な読み方でとりあえず表記したうえで、お客様に読み方を確認いただくようお願いする旨のコメントを添えて納品させていただくことが一般的です。

また、人名についても注意するようにしています。例えば、日本語から英語への翻訳案件で、文中に「羽生」というお名前の方が出てきたとします。もしフリガナがない場合、英文でHanyuとすべきか、Habuとすべきか、はたまた他の読み方なのか、判断するのは困難です。しかし、判断できないからと言って翻訳段階でどちらかに決めつけてしまうと、もし間違っていた場合、存在しない人、もしくは存在する別の人が翻訳された文章に登場することになるため、英文を読んだ人が困ってしまうことが容易に想像できます。そのため、このような場合はお名前の読みをご確認いただけるよう、必ずコメントを添えてお客様に納品するようにしています。

調べられることはきちんと調べて正確な情報を記載し、どうしてもお客様にご確認いただく必要がある場合は、きちんとお客様にお願いすることを大切にして、翻訳された文書を読んだ人が困ることがないように気を付けています。

 

気を付けていること③ 原文に不備があると思われる場合、お客様にその旨お伝えする

これは厳密に言えば翻訳の話ではないのですが、まれに、お客様から頂いた原稿の内容に不備と思われる箇所が見受けられることがあります。例えば、本文中に「本実験の結果を図2に示す」と書いてあるのに、肝心の図2が見当たらない、といった具合です。

このような場合、たとえ図2が見当たらないとしても翻訳すること自体は可能であるため、特に翻訳者やチェッカーにとって支障があることはありません。しかし、必要な情報がない場合、翻訳された原稿を読む人の立場に立つと、何かしら問題が出てくる可能性があることは予想できます。そのため、翻訳するうえでは問題ないことではありますが、原稿にて情報が欠けている旨を、コメントにてお客様にお伝えしたうえで、お客様にご確認いただくようお願いするようにしています。

 

まとめ 成果物を手に取ったお客様の目線を意識する

以上、チェッカーとして気を付けていることをご紹介させていただきました。

複数のことを書かせていただきましたが、「成果物を手に取ったお客様の目線を忘れない」と言う考え方はすべてのことに共通しています。ビジネスを行う人間である以上、お客様目線を忘れない、と言うのはあまりにも陳腐な表現であると思われたかも知れません。私としても他に良い表現がないか考えてみたのですが、結局この言葉に行きつきました。

しかし、やはりお客様目線に立つことは何よりも大切だと思っています。翻訳会社の仕事は、極端に単純化すれば「訳すこと」が仕事と言えます。「訳すこと」だけをゴールとするのであれば、誤訳や訳抜け、固有名詞の間違いには注意を払うとしても、たとえお客様からお預かりした原稿に誤りが見つかった場合、それに言及するのは仕事の範囲外、と言うこともできるでしょう。それはそれでひとつの正解だと思いますし、翻訳会社や翻訳者によって持っている答えはバラバラでしょうから、絶対的な答えはないと思います。

そんな中、個人的な意見としては、「訳すこと」に加えて、お客様に何かひとつでもプラスアルファで価値をお届けできるようにしていきたい、という風に思います。さきほどの例で言えば、原文で欠けている箇所がある可能性をお伝えすることにより、お客様ご自身がお気づきでなかった点に気づくことができるかも知れません。小さいことかも知れませんが、お客様にとって良いことに少しでもつながりそうであれば、積極的にお伝えしたほうが良いかと思っています。それにより、不足していた部分も追加してやはり翻訳したい、というご要望につながれば、弊社としてもありがたいことですし、お客様としても不足していた箇所を追加し、書類の完成度を上げることができる他、翻訳した内容を目にした方が混乱することも防ぐことができます。このように、お客様の目線を基準にして行動することが、お客様、そして翻訳会社双方の利益につながるのではないかと思います。常にプラスアルファの価値をご提供するのは簡単なことではありませんが、そういった心構えだけは忘れないよう、チェックを行うようにしています。

最近は機械翻訳も発展していますので、「訳すこと」が目的であれば、必ずしも翻訳会社が入る必要がない時代になってきました。そのような状況の中で、弊社としては、訳すのはもちろんのこと、翻訳したものを手にしたお客様にとって何が良いのか常に考えつつ、付加価値を提供していきたいと考えております。もし御社にて翻訳が必要になった際はお力になれるかと存じますので、ぜひ営業担当者までお問い合わせください。

 

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